#522 たまには小説っぽいものを書いてみました
僕「こ、ここは…?」
気がつくと僕は、列に並んでいた。
見えるのは同じ姿をした人たちの大量の列。とは言えこの先数人くらいでしか判断をしてはいないが。一体これはどれくらい続いているのだろう…。
それにしても並び方が奇妙だ。みんなだいたい前の人たちとは同じくらいの間を空けている。もう少し詰めてもいいものなのに、まるでこれ以上は詰められないとでも言っているかのようだ。
それに加えて、多くの人たちは2人で並んでいる。現に僕の前の3組やすれ違って向こうに去っていく人たちの殆どはそうだ。
でも僕やすれ違って通り過ぎる人たちの中には1人で並んでいる人もいる。
?「よう、気がついたか」
僕「だ、誰だい?!」
不意に後ろから声をかけられ、ふと声の主の方を見た。そいつは怪しげな黒いコートに全身を包んでいた。
?「あぁ、俺か。俺はここにいる奴らからアニキって言われてる。」
僕はこの見知らぬ世界では誰を頼るべきか皆目一切見当がつかなかったので、この"アニキ"に色々聞くことにした。
僕「ふ〜〜ん、どうしてあなたは黒いコートを見にまとっているんだい?」
ア「話せば理由は長くなるがね、ここの世界に生まれた奴らは大抵こんな格好をしているんだ…」
周りを見ると、確かにみんな黒いコートを着ている。今更気がついたが、自分だって黒いコートを着ているではないか。
僕「それじゃあみんな同じ服を着ているんですね」
ア「ところが全員ではないんだ。ほらあっちを見てみな」
示された方向を見ると、赤い帽子をかぶった人たちが何人も並んでいた
僕「あいつらは…?」
ア「奴らは俺らと違って赤い帽子をかぶっている。まったく羨ましいぜ…、クソゥ!!」
僕「…?何かあったんですか?」
ア「あいつらはな、俺なんかと違って人気者でよ、いつもちやほやされていやがるんだ…」
僕「ハァ…」
この話題を"アニキ"と続けるのは大変だと思われたので話題を変えることにした。
僕「あ。あの人は泣いている…」
ア「あいつらだけじゃねえさ、見てみろ」
僕「あ…」
周りを見渡すと同じように泣いている人を所々に見つけた。
僕「あの人たちは何で泣いているんだい?悲しいことでもあったのかい?」
ア「違うさ。見てみな奴らの顔」
顔、そう言われて泣いている人たちの顔をしげしげと覗き込んだ時、僕はある種の違和に気がついた。
僕「何か、痣がある…?」
みんな、僕たちと同じ顔をしているのに、泣いている人たちの顔にだけは緑色の模様があった。あれは一体なんなんだろう。
理由を考えていると、突然、周りが暗くなった。とりあえず後ろにはアニキがいるから心配はない、そう思っていた。
暗闇が明けると、アニキの姿は、なかった。
僕「あれ?!アニキ?!」
周りを見渡したがどこにもいない。暗闇の中でまさか誰かに連れ去られたのか?
??「へい兄貴!!よろしく!!」
僕「あに、き?」
聞きなれない声を耳にして、声の主を目で探した。もともとアニキがいた場所に見つけたそいつは、黄色い帽子をかぶっていて、とても若々しかった。
僕「アニキって…?」
??「あなたのことですよ」
僕「僕のアニキはどこ行ったんだ?!」
つい声を荒らげてしまった。
??「先ほどここにいた方ならさっきの暗闇の中でどこかへ行ってしまいましたよ」
僕「どこかへ、行った…?」
信じられなかった。この不慣れな世界でやっと見つけた頼れる人なのに、どこかへ去ってしまうなんて…。
??「ところで兄貴の名前を伺ってもいいですか?」
僕「え?僕のかい?僕は…」
挨拶をしようとした刹那、ふわり、と僕の体が宙に浮いた。
子供「お母ちゃん!!これ食べてもいい?」
母「じゃあそれで最後の1枚ね」
子供「ありがとう!!」
父「しかしよく食べるなぁ、この体のどこに10皿も入るんだか…」
母「食べ盛りの子供だもの、元気でいいことよ」
父「…うむ!!それもそうだな!!」
1組の家族が団欒をしている。
駅前の回転寿司屋は、今日も満員御礼である。